遺言書は「自分の財産をどう分けるか」を明確にし、残された家族の争いを防ぐ大切な書類です。特に夫婦で財産を築いてきた場合、どちらかが亡くなったときのことを考えて、2人で一緒に遺言書を作成するケースが増えています。
しかし、夫婦だからといって1通の遺言書に2人の意思を書き込むことは法律上できません。ここでは、夫婦で遺言書を作る際の注意点と、おすすめの書き方について解説します。
1.夫婦共同の遺言書は無効になる
民法では、「遺言は一人で単独に行うもの」と定められています。つまり、夫と妻が1枚の用紙に連名で署名押印しても、その遺言書は無効になります。
たとえば、「私たち夫婦は長男に自宅を相続させる」などと共同で書いたとしても、法律上は遺言として認められません。これは、遺言が「個人の最終意思の表明」であり、他人の意思に左右されてはならないと考えられているためです。
そのため、夫婦で遺言書を作る場合は、必ずそれぞれが別々の遺言書を作成する必要があります。
2.財産の共有名義には特に注意
夫婦共有の不動産や預金などは、共有持分を明確にしておく必要があります。
「自宅は夫婦で2分の1ずつ所有」といった場合、夫の遺言書では自分の持分だけを指定できます。
「共有財産をそのまま妻に渡したい」と思っても、自分の持分を超える指定はできません。
遺言書には「自分の持分を妻に相続させる」と具体的に記載することが重要です。
3.二次相続を見据えることも大切
夫婦のどちらかが亡くなった後、残された配偶者もいずれ亡くなります。
最初の相続(一次相続)だけでなく、次に起こる相続(二次相続)まで考えておくと、子どもたちの負担を大きく減らせます。
たとえば夫の遺言で「全財産を妻に相続させる」としても、妻が亡くなったときに再度遺産分割が必要になります。
このとき、妻の遺言に「自宅を長男に相続させる」と明記しておけば、スムーズに次世代への承継が可能です。
夫婦で協議して、二次相続まで見据えた設計をしておくことが理想です。
4.行政書士など専門家への相談がおすすめ
遺言書は一見シンプルに見えますが、文言や形式を誤ると無効になることがあります。
また、家族構成や財産の内容によって、最適な書き方は異なります。
夫婦で作成する場合は、行政書士や公証人など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
特に次のような場合は、専門家のサポートを受けると安心です。
- 再婚しており、前妻・前夫との間に子がいる
- 共有名義の不動産がある
- 相続人同士の関係が複雑
- 二次相続まで見据えた設計をしたい
まとめ
夫婦で遺言書を作るときのポイントは、
- 必ずそれぞれ別々に作成する
- 共有財産の扱いに注意する
- 二次相続まで見据える
という3点です。
お互いの思いや家族の将来を尊重しながら、法的に有効で安心できる形で遺言を残すことが大切です。
行政書士としても、夫婦での遺言作成は「最もトラブルを防ぐ有効な手段」の一つとして強くおすすめします。